中学校最後の年に出会ったクラスメイトは、カリグラフィー文字や万年筆、色とりどりの舶来品インクについて教えてくれた。
こっそりと親の引き出しから持ち出した万年筆、ブルーブラックのカートリッジを欠かさず常備し、書いて些細なことを楽しく味付けしてクスクスと笑い合う、そんなことを覚えていった。
萬年筆を使っていると文豪になった気分がする、そんな理由で私達はペンに名前をつけて喜んでいた。太宰治に坂口安吾。履歴書作成の時は嫌々ながら動いていたペン先も、友と笑い合い一筆をしたためている時はスルスルと進んでいくものだった。
このご時世、ペンも映える写真で色付けして、SNSに投稿してなんぼ、なのかもしれない。
それだけ電子機器や通信技術が発達したのだろう。
久々に萬年筆に名前をつけて呼びたくなった。そんな9月の終わりにマブダチへ向けて。