相棒と云う名の万年筆

かねてから気になっておりました、Lichtopeさん へ、万年筆のペン先調整をお願いにお伺いしました

舶来品だから、書き味は日本語筆記には不向きなのだろうと、諦めかけていた万年筆を丁重に研ぎだしをして戴きました

インクや万年筆を愛する、作家の皆さんの作品や、色とりどりの文具が沢山並ぶ一室は、まるで異国の店内のよう

ここは東京の一角と云うことを、思わず忘れてしまうほどです

日常生活においてデジタル化が加速する一方、いまいちど書くための道具を見直し、ペンを手にすることによって

自身の心を整理し、落ち着けて、したためる

インクとペン先から紡がていく記録を見ていると、今までは嫌いだった自分の字を、少しずつ愛することが出来るようになるのではないでしょうか

Writing is My Thing

手紙、SNSでの手書き投稿、プレゼンテーション資料などに、当方で幅広く活用している原稿用紙ですが、一体何を使っているの?とお問い合わせを頂くことが多くなりました。

愛用しているものは、あたぼうさん謹製の飾り原稿用紙です。

飾り原稿用紙とふたふで箋 – 文房具開発販売のあたぼうステーショナリー

幼少時代に嫌々ながら向かい合った無機質な原稿用紙とは異なる、華やかな飾り枠がまず目に留まります。

日本文学の書写、欧文レタリングの練習にも彩りを添えてくれます。

A 4、A5、ふたふで箋と幅広いサイズ展開です。

手書きでの使用はもちろん、原稿用紙をスキャンしてPPの発表用資料に貼り付けたりと

活用方法が拡がります。

以前エントリーした作品搬入の際の添付資料も、飾り原稿用紙を使って作成いたしました。

(「画家たるもの、描く事だけではなく作品を言葉で説明できる様にならないといけない」と熱く語りながら指導していた、学生時代の恩師の言葉を思い出しました)

飾り原稿用紙のおかげで、入選することができました。

萬年筆の日によせて 2020.9

中学校最後の年に出会ったクラスメイトは、カリグラフィー文字や万年筆、色とりどりの舶来品インクについて教えてくれた。

こっそりと親の引き出しから持ち出した万年筆、ブルーブラックのカートリッジを欠かさず常備し、書いて些細なことを楽しく味付けしてクスクスと笑い合う、そんなことを覚えていった。

萬年筆を使っていると文豪になった気分がする、そんな理由で私達はペンに名前をつけて喜んでいた。太宰治に坂口安吾。履歴書作成の時は嫌々ながら動いていたペン先も、友と笑い合い一筆をしたためている時はスルスルと進んでいくものだった。

このご時世、ペンも映える写真で色付けして、SNSに投稿してなんぼ、なのかもしれない。

それだけ電子機器や通信技術が発達したのだろう。

久々に萬年筆に名前をつけて呼びたくなった。そんな9月の終わりにマブダチへ向けて。

さようなら、モッテ画材店 2020.1

Sayonara motte

学業の街、調布市の仙川町にある名店が2019年冬に閉店してしまった。時代の変化の波云々で片付けてしまうには言葉も足りぬし、無念さしか残らない。

仙川周辺には様々な画家達が居て、モッテ画材店を愛用していた。「展示会 困った時の モッテ頼み」そんな一句が絵描きの間で囁かれるほどに、モッテの額装技術と額縁種類の豊富さは沢山の作品や芸術を支えてきた。

絵描きたちは色々あれども、モッテ主催のクロッキー道場に集まり、描画に集中した後は線路沿いの赤提灯に移動して、パァーッと打ち上げで呑んだくれていたものだ。

かなりの酒豪揃いだった。

「描くこと」とは、「作品を額装すること」とは何ぞやをモッテの大檀那氏は30年以上の時間をかけて少しずつ伝えてくれた。

情報とデータばかりが流れ行く今の時代だが、モッテ画材店で知り得ることが出来た世界をこの先も忘れる事なくいきたい。

Midnight Moonlight 2017.11

八王子への移住は急に決まった。新しい住まいからは朝焼け空と昇る朝日がよく見える。

力強く輝く太陽と共にビートルズのGood Day Sunshineが聴こえてくるようだ。太陽にやる気と元気を頂いて身支度を整えた私は都心に向かった。一日が始まる。

家路に着く頃には夕焼け小焼けの時間をとっくに過ぎ既に日が暮れていた。

澄んだ空気のためか八王子の夜空は23区内で見上げる空と色合いが違う。

萬年筆のインキ、ブルーブラックの様な漆黒とは違う、深い藍色の空。昼間の喧騒がまるで嘘の様に静かに広がる。深い海の色ともどこか似ている。

夜空に飲み込まれて、このまま溶けてしまいたい。甲州街道沿いを泳ぐ様に、ゆっくり漂う様に、海の底へ深く潜っていく様に私は帰路につく。

そんな中、深海の様な夜空にまたたく星の輝きを信じ続ける、尊いこころざしを持つ人々と出会った。

暫くの間描くことを止めていた私の絵筆は再び動き出した。

(八王子市夢美術館 「八王子市市制100周年記念事業 市民公募はちおうじ」 入選)